イラクサを紡いだソレンヌ 採集地:フランス
「アンドルー・ラング世界童話集 第二巻 あかいろの童話集 "イラクサをつむぐむすめ"」より
 (墓場に生えている)イラクサで服を作る話はアンデルセン版の「白鳥の王子」と同じですが、その他はまったく似た所がなく、欧州人の死生観の一面を表した面白いストーリーだと思います。

 イラクサで糸を紡ぎ布地を仕立てることは世界的に多くの例を挙げることが出来、実際にはこの話のように不可能ではありません。もしかしたら、イラクサで布を作るようになった由来の話なのかもしれません(※)。ただ、イラクサで作った布は原作と同じく白い地合になるのですがシルクのように真っ白にはいかないようです。そこら辺はFairytale的魔法の力が働いているのかもしれません。

 なお、原文では伯爵が娘の糸紡ぎを妨害するシーンが一章分ありますが、Ringlet版ではいくらかカットしてあります。糸車を壊すのはもちろんのこと、娘を殺してしまったりしますが、翌日には何事もなかったようにすべて元通りで諦めた、というのがあらすじです。

 作中でエルセがアルランドルを知っていると言っていますが、現実世界ではフランドル地方のことで、エルセの出生地から遠くないところにあります。

 ※どうも欧州ではイラクサは墓場や不毛の地に生えるような、"死"をイメージさせる草という立ち位置のようです。「フランス民話バスク奇聞集」では死んだ妖精ラミナを埋めた場所にはイラクサしかはえなかった、という記述があります。