| 嘘の味 | 採集地:インド(パンジャーブ) |
| 「インドの民話 "四人の娘と王様"」より | |
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資料のあとがきによれば賢い民草が国王をやり込める話は世界中にあり、これは単にそのヴァリエーションのひとつであると紹介されています。 中世後期以降、インドでもその役割はヨーロッパと同じく宮廷道化師がこの役を担うらしく、ベンガルのゴーパール・バール、南インドのヴィジャナガル国のテナリ・ラーマ、ムガル帝国の皇帝アクバル(第三代皇帝)のビルバルが有名で、特にテナリ・ラーマは16世紀、南インドのヴィジャナガラ国王クリシュナデヴァラヤの宮廷道化師として、現代でもドラマや漫画や児童書に登場する人気キャラクターだと言います。 原版では「四人の娘」ですが、Ringlet版では三人目が「愛の味」というやや性的な話なのでカットしてあります。 以下のようなやりとりが入っていました。 「この世に愛を交わす味わいほど甘いものはないと言っていました」 「しかし、お前はたいへん若い娘だ! どうしてお前は愛を交わすことについて知ることが出来るのだ? お前は誰の娘かな?」 「私は吟遊詩人の娘でございます」 「私がたいへん若いのはその通りでございます。でも私には目も耳もあります。私が見たものから、とにかく、愛を交わすことがたいへん楽しいに違いないと思うのです。私の母は小さい弟が生まれた時とても苦しみました。死にそうだったのです。でもすぐその後で母はそれまで通り踊り子に戻り、以前とまったく同様に恋人たちを迎え入れました。それで愛を交わすことは抑えられないに違いないと思うのです」 細かい点を見ていくと、インドでは古代から葡萄づくりが行われており葡萄酒文化もありました。(ソーマやアムリタという酒のような役割を果たす飲み物が有名ですが、これらは実際には麻薬性のある植物から精製されたと思われます) また、原版に登場する通貨はルピーと記述されていますので、近代以降にアレンジされたものなのでしょう。中世インドの通貨単位は古代ローマのデナリウスを語源とするディーナーラでした。(アラブのディナールも同じ) |
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インドの主宗教であるヒンドゥーの神は、少なくとも物語中ではわりと気軽に人前に現れます。ですので、王様や大臣たちが神様の休息所と騙されるのはそれほど変な話ではないように思えます。また、王様が安易に結婚の選択をせず、相談役に据えるのはなかなかいいエンディングではないでしょうか。(TINA) 賢くて、王様を前にしても堂々とした女の子です。 挿絵では、すべてを見透かしてこの状況をふふふとちょっと楽しんでいるような…雰囲気を目指しました。(宣教師ゴンドルフ) |
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