エインセル 採集地:イギリス(スコットランド)
「ヤラリー・ブラウン イギリス民話集2 "私自身"」より
「妖精 Who's Who "エインセル"」より
 私自身(My Own Self)の方言かスコットランド語が"Me A'an Sel"、さらにそこから"Ainsel"に変化したとあります。Ringlet版はもっとも一般的な"Ainsel"を採用しました。 邦訳は「エインセル」「エインゼル」とあるようですが、清音が一般的なようです。また、原版の舞台であるノーサンバーランド(Northumberland)はイングランドとスコットランドの境界線上にあるので、採集地は悩んだ末にスコットランドにしてあります。

 誰かに対して「わたし」という答えでミスリードを誘うFairytaleは欧州各地に見受けられ、スコットランド北東のオークニー諸島(オークニー諸島民話集より)、スイスの「エセルツェの妖精」(スイス民話集成)、「ラップチェーン山のスコーグスロー」(スウェーデンの民話)にも同じコンセプトのものが見受けられます。これは例外なく「わたし」と答えた側が痛い目を見る展開なのですが、Ringlet版では逆のパターンにしてあります。

 昔々、TINAがFairytale好きになったきっかけのストーリーです。今読み返してみると特出して面白いとは思えないのですが、My Own Selfと答えるシーンが面白いなあと思った記憶があります。参考にした二つの資料では結末が若干違っていて、「イギリス民話集」では「怖い目に遭いながらも、次はどうしようかと考えていた」とあり、「妖精 Who's Who」では「長い間、夜更かしをすることはなかった」と結ばれています。大元になった(と思われる)Joseph Jacobsの「More English Fairy Tales」では前者の通りに結ばれているので、Ringlet版もそちらを採用しました。

 ハッピーエンドが基本のRinglet版ではせっかくなのでもう一度来てもらうことにしました。最終章は完全創作です。原版によると、息子は6歳だそうです。母親に対しては反抗期ですが、自分の過ちは素直に謝るんじゃないかなあということでこんな話にしてみました。