守護野牛 採集地:北米(スー族)
「世界の民話24 "野牛の霊"」より
 出典には原典が載っておらず、元の本はドイツ語(Eugen Diederichs、現Hugendubel)のため深追いは出来ませんでしたが、興味深い物語です。
 どの点が興味深いかと言えば、スー族の著名な物語である「白いバッファロー(※1)の仔牛の女」とよく似た要素を備えつつ、あくまでも独自の物語である点と言えるでしょう。

 比較のために「白いバッファローの仔牛の女(プテ・サン・ウィン)」の前半部分のあらすじ(※2)を挙げておきます。

 まだスー族がワカンタンカ(大いなる神秘)を知らなかった時代、スー族は食べ物がなく、飢えに苦しんでいた。
 酋長に狩りを命じられた若者ふたりが啓示を受け、ふたりのもとに白いバッファローの仔牛がやってきたかと思うと美しい女性に姿を変えた。
 彼女は彼らに儀式の方法を教えて先に帰らせ、それが整った四日目にスー族の野営地へやってきた。
 彼女はスー族に七つの儀式、聖なる石とパイプと歌、ワカンタンカへの祈り方などのありとあらゆる物事と知恵を伝えた。

 本作とは「バッファロー族という人間の姿を取ることも出来る野牛に助けられた」要素は似ています。
 しかし、性別が違い、自己犠牲を行うこともなく、(ワカンタンカの)使者的な立ち位置として信仰も伝えたことになっており、食糧問題に焦点を絞った本物語とは別系統に属すると考えられます。

 スー族は馬を駆って野牛を狩る狩猟採集型平原インディアンの代表とも言える存在で、カスター将軍との戦いやウーンデッド・ニーでも有名です。
 しかし、スー族という言葉はダコタ族、ナコタ族、ラコタ族の総称であり、各氏族はさらに細かく枝分かれしているため、やや誤解を招く括り方かもしれません。
 彼らが平原インディアンとなったのはおそらく白人入植前後からで、中世のスー族は定住民か半定住であり、農耕も行っていたと考えられます。スー族は環境変化によって生活の場所を森林と湖(川)地域から平原に移した部族と言えます。
 挿絵では平原移住後のスー族を想定していますが、これは16-18世紀前後の生活イメージになっています。

 スー族の子供は5-6歳になれば立派に親の手伝いをしていたとする資料があります。
 しかし、それでもこうしたごっこ遊びに興じることもあったのではないでしょうか。

 ※1 一般的にはバッファローと呼ばれているが、正確にはアメリカバイソン。
 ※2 この「白いバッファローの仔牛の女」はパハ・サパ(黒い丘。ブラックヒルズ)を聖地とする描写があり、18世紀以降に整えられたものと考えられます。
 悲壮感や哀愁が漂ってきそうなシチュですが、淡々と進行する点、後半ではヒロインの言動や想いが一切語られない点で少し異質な感じがします。旦那が殺された時、どんな気持ちだったんだろう…。その骨に祈ると願いが叶うというのもなんだか…。(TINA)

 おままごと中ですが、しっかり惚気てる雰囲気で、ということでしたので甘々な感じが伝わるようにがんばりました。(宣教師ゴンドルフ)