| ハバーシャ | 採集地:インド(イラン周辺?) |
| 「アンドルー・ラング世界童話集 第七巻 ちゃいろの童話集 "心やさしいワリ・ダード"」より | |
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リア充爆発しろシリーズ。 原版はかなり長編で、一冊の本として刊行されているほどです。 Ringlet版では主人公を変更した上で物語の途中に挿入されているサブストーリー的な物語をカット、他にも細かな部分を省略するなど短縮化に手を入れています。 原版との大きな違いは下記のとおりです。 ・原版では主人公は身寄りのない男性老人。 ・物語の後半、進退窮まった主人公が投身自殺をしようとして妖精(ペリ)と遭遇し助けられる話が挿入されている。 原版の主人公はワリ・ダード・ガンジェイ、「禿頭のワリ・ダード」という名前の老人で、欲のない彼が貯めていたお金でなにか良いことをしたいと思い、それがだんだんと話が大きくなって東西の王国の仲を取り持つことになった、という話です。 主人公に付き合わされることになるのは同じく友人の宝石商ですが、オリジナルの彼はもう少し気の毒で、最初は面白がっていたものの後半ではすっかり怖気づき、最後の段階に至っては今までの嘘がバレてクビが飛ぶことを恐れながら使者を努めます。 妙な言い回しですが、主人公が話の中心に座らない珍しい形式のストーリーです。 実際にあちこち動き回るのは友人の宝石商で、最後に彼の存在が物語を締めることになります。 出典は「インド人から語られたこと」(Told an author by an Indian)となっていますが、砂漠にラクダを仕立てて行商を行う商人が出てきたり、インドのデリーという地名が出て来たかと思えば、主人公のワリ・ダードは米のご飯を食べていたりと、どうにも定まりません。 有力なキーワードとして、Ringlet版ではカットしましたが後半に彼を自殺から救うペリという妖精が登場します。これはペルシャ語圏で妖精を指す言葉で、東西の王国がそれぞれインドとアラブの国であるような描写を見ると、どうもイラン周辺の話ではないかと思います。 後半のカットしたシーンはサブストーリーに相当するもので、話が大きくなりすぎて収集がつかなくなったワリ・ダードが後悔し、王様たちが出会う前に自殺しようとしたところを妖精(ペリ)に助けられ、立派な衣装と邸宅をもらう話になっています。 原版では東西の王様は宮殿のように生まれ変わったワリ・ダードの家で邂逅することになっていて、ボロボロ状態のまま話を収めたRinglet版とはかなり違うイメージになっています。 (東西の王様の一行が、一日というところまで迫った日)ワリ・ダードは決心した。みずからのおろかさがまねいた、このはずかしさと苦しみをおしまいにする正しい道はただひとつ、自分が死ぬことだ。そこで、だれにも相談することなく、真夜中に家を出ると、けわしく切りたった高いがけの上へと向かった。 (中略) ワリ・ダードには、ふたりが人間ではなく、天から来た妖精ペリだということがわかった。 「なぜ泣いているのですか?」ペリのひとりがたずねた。その声はナイチンゲールの歌声のようにすみきっていた。 「はずかしくて泣いておるんです」 「ここで何をしているのですか?」 もうひとりがたずねた。 「ここには、死ににきました」 それから、ワリ・ダードは、ふたりにきかれるまま、これまでのことをすっかり話した。 すると、ひとりめのペリが進みでて、ワリ・ダードの肩に手を置いた。そのとたん、ワリ・ダードは、何かよくわからないが、ふしぎなことが自分の身におこっているのを感じた。 また、原版では老人のワリ・ダードが実は王女との結婚を望んでいるのではないかと問われるシーンがあり、そうした年の差婚が今でも実際にあるように、昔からあったのだろうと想像されます。 四日目に、カイスターンの王様は、ワリ・ダードにそっと声をかけ、じつは、むすめとの結婚をのぞんでいるのではないかと尋ねた。ワリ・ダードは、王様のありがたいことばに感謝したあと、そんなおそれおおい望みをいたいたことはなく、美しい王女様と結婚するには、自分はあまりにも年をとっていてみにくいと答えた。 Ringlet版では主人公を女性に変更し、最後にこの話に乗ってくれた宝石商とのロマンスを追加しました。また、原版では西の王様一行だけが出発するのですが、東西の王様が真ん中で出会うように変更しました。最後のシーンで王様がふたりの中の良さを「楽と踊(がくとよう)の間柄」と例えていましが、これは自分の造語で、歌と踊りは切っても切れない関係をイメージして作りました。 主人公は善良なわけではなく、こうなることを見越して動いたような話になり、少し本編っぽくなった気がします。 |
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壺いっぱいの銅貨からふたつの大国を動かすことになった、ある意味ですごい人です。原版と違って、ある程度こうなることを予想していたようなキャラにしました。キャラデザの段階ではまったく飾り気のない服を着ていましたが、やっぱり女性なんだし…と思い直して挿絵では刺繍を入れてもらいました。手間が増えて申し訳なかったです。(TINA) 登場人物みんなまるごと幸せになるお話はいいな、と改めて感じました。いつでも穏やかに微笑みを絶やさない女性、というイメージで描きました。(宣教師ゴンドルフ) |
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