| リンノルム王子 | 採集地:ドイツ |
| 「アンドルー・ラング世界童話集 第五巻 ももいろの童話集 "リンドオルム王"」より | |
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リア充大爆発しろシリーズ。 リンドオルム(Lindorm)、あるいリンドヴルム(Lindwurm※ドイツ語)として知られるこの「蛇の王子」話は、欧州全域から中東まで広く分布している有名なストーリーのひとつです。例えば、イタリアではカルヴィーノが類話を収録しています。イタリア版では王に具体的な名前がなく、前半はだいたい同じですが、後半、王の妻が直面する試練はかなり異なったものになっています。また、ユダヤ民話にも収録されてるバージョンも中盤部分からだいぶ変わった展開になっています。これは、後述のように、もともと前半部分と後半部分が別々の物語だった(あるいは、後半部分が後に付け足された)ことに寄るのではないかと思います。 前半部分の大まかなストーリーとしては次のようになっています。 1.跡継ぎに恵まれない王妃様が助言を受ける。 2.助言の内容は様々だが、決してやってはいけないことを言われる。 3.王妃様はその忠告を忘れてしまい、生まれてきた子供(普通は男の兄弟)のうち、片方は蛇(Lindorm)だった。 4.Lindormは恐れられ捨てられるがしぶとく生き残り、自分が王族の身であることを知ると、王や王妃に妻をよこすよう脅迫する。 5.Lindormは連れられて来た妻たちを次々に殺してしまい、妻のなり手がなくなる。 6.貧しい娘が候補に連れてこられる。 7.娘は灰汁の桶とミルク(あるいはたわし)、下着をたくさん(ストーリーによって異なるが7-8枚)を身につけ、Lindormが肌着を脱ぐよう言った時、彼にも皮を脱ぐように言い、蛇が脱ぐ皮を無くして肉が出てきたところで灰汁につけ、こすると人間の姿に戻る。 Ringlet版での違いは、まず生まれてくる子供がリンドオルム一人という点です。二人目は王様と王妃様の心配を取り除くために必要ですが、リンドオルムが現れてからは特に活躍することもなくフェードアウトしてしまうのでカットしました。また、蛇のリンドオルムが妻を要求し、みな殺してしまうシーンも削除しています。(人間に戻ったリンドオルム王が知性と勇気に溢れた素晴らしい性格なのを考えると、人間に戻ったときに理性と知性も取り戻したと考えるとつじつまが合う気がします)なお、リンドオルムが花嫁を殺してしまうシーンは以下のように語られています。 "王様とお妃様はほかによい手を思いつかず、リンドオルムを城に招いて、連れ合いを探してやることにした。ふたりは、相手さえ見つけてやればリンドオルムは満足すると思い、女奴隷のだれかと結婚させればいいだろうと考えていた。こうしてリンドオルムは城にやってきて、女奴隷の一人を花嫁にもらったのだが、朝になってみると、花嫁はずたずたに引き裂かれて床に横たわっていた。王様とお妃さまがどんな女を花嫁にあてがっても、いつも結果は同じだった。" 後半部分はおそらく別のストーリーが繋がったもので、オリジナルストーリーは人間の姿に戻ったところで終わりだったのではないかと考えられます。(そのままだとリンドオルム“王子”ですが)心の優しい義理の娘と義理の娘を疎ましく思う継母は昔話では定番の構図です。途中の手紙をすり替える妨害工作も昔話の定番で、アジアにも類話があり、これだけでひとつのストーリーが成り立っています。最後の逆転劇も含めて、王道的ストーリーをつなげたものになっています。。 また、原版では王妃が子供たちと森へ逃げ込んだ後に、森に住んでいた木こりを悪魔から救い出すシーンがあります。Rule of Threeを駆使した典型的な話なのですが、本編とはほとんど関係ないのですべてカットしました。 これも、元々は独立していたストーリーが組み込まれたものと考えるのが自然だと思います。 最後に、Lindwurmの意味について、どの文献でもLind+Wurmの形で紹介されていて、後半のWurmは英語で言えばWorm(虫)ということで一致しています。ドイツでは翼のあるドラゴンのタイプで書かれることが多いそうですが、脱皮するシーンを考えても現実の蛇のような形だったと見ていいでしょう。問題は前半のLindで、参考文献ではドイツ語のLinde、つまり菩提樹説を唱えていますが、本編で王と菩提樹の関連性を示すシーンはなく、この解釈は苦しい気がします。Wikipediaのリンドヴルム王子の項では、デンマーク語の解説として「レン(lin)はしなやかなという意味」とあります。これは筋は通っていますが、ドイツ語の「しなやか」はまったく違うようで、一貫性という意味ではやや疑問が残ります。独自の解釈としては、Lindは姓ではないかという説を上げておきます。つまり、「虫のリンデ(あるいはリンテ)」という意味ですね。いずれにしろ、固有名詞として定着している上に語呂もいいので、起源をたどるのは難しいでしょう。 それから、主人公が言及している結婚で悩むゲームとはドラクエ5ではなくファンタシースター3のことです。 |
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ちょっと不幸な玉の輿という感じの王妃様。小さい頃からなにかと苦労してるようで、達観してる部分があるんじゃないかと。Ringlet版の倫理規定的に脱ぐシーンは悩みましたが、物語の核心の部分だけにそのままにしました。もっとも、当時の倫理観で言えば、裸になることはそれほど恥ずかしくない行為だったと思います。(TINA)
粗末な小屋で暮らしている時の服なので少しぼろぼろに…。シンプルですが高級感のあるドレス、という雰囲気をイメージして描きました。TINAさんに渡したら胸がでかい!と。子供時代も小さかったのに大人になっても小さいままだとは…! 可哀そうです。(かずしま) |
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