橋の上の財宝 採集地:イギリス(イングランド)
「ヤラリー・ブラウン イギリス民話集2 "スウォファムの行商人"」より
 メジャーな話シリーズ。

 原版ではジョンという行商人(Pedlar/店舗を持たず、品物を担いで売り歩く商人。店舗を持つ商人とは区別される)がスウォファム(Swaffham)という街から夢の内容を信じてロンドンへ向かう話です。スウォファムはノーフォーク州(Norfolk)にあり、ロンドンとは120キロほど離れています。徒歩では少なくとも一週間はかかるはずで、当時の旅行事情を考えるとそれなりの決意が必要だったでしょう。実際に、スウォファムにはこのストーリーにちなんだ行商人と犬の大きな看板(Town Sign)があり、教会には木像が建っています。

 Ringlet版では商人を女性に変更した他は原版どおりのストーリーにしました。
 現在のロンドン橋はコンクリート造りの立派な橋で、テムズ川を横断する人と車が行き交うものですが、何度も架け替えられている中世のロンドン橋は少し事情が異なります。中世(1500年代)のロンドン橋は橋上に住宅、商店、教会などが橋を覆うように建てられていて、くりぬかれた一階部分を通行する造りになっていました。現代でもイタリア、フィレンツェのポンテ・ヴェッキオ橋(Ponte Vecchio)が同じような造りの橋として残っています。

 このタイプのストーリーは世界各地に存在し、有名な都市の有名な橋にはだいたい似たような話があると言ってもいいくらいです。なお、中東には「バグダッドでカイロの夢を、カイロでバグダッドの夢を"In Baghdad, Dreaming of Cairo: In Cairo, Dreaming of Baghdad"」という古い詩が残っています。バグダッド→カイロ間は1300キロほどあるので、(往復しなければならないわけですから)これは本当に大変な旅になったことでしょう。他の文献でも、この種のストーリーの起源はAlf Laylah wa Laylah(千夜一夜物語)に求められるとしているものがあり、中東起源説が有力なようです。

 作中で主人公が歌っているのは有名な「ロンドン橋落ちた」のRinglet版です。日本では一般的に"London Bridge is falling down"と歌いますが、Broken downと歌う場合もあり、こちらの方がやや古く、出身地によってわかれるようです。(アメリカはFalling down、イギリスはBroken downが多い)



 温和で素直な田舎の行商人クレア。旅に出るので杖と寝具(毛布)を持ってもらいました。「貧乏な」商人を強調するために継ぎ接ぎがあるんだけどCG版では見えない位置に。残念。(TINA)

 女の子の一人旅は危ないよ! クレアちゃん! 貧乏なので服に装飾は一切なしなのです。英国紳士のような帽子がお気に入り。(かずしま)