王女と漁師の息子 採集地:ルーマニア/マルタ
「ルーマニアの民話 "王女と漁師"」より
「世界の民話13 地中海 "猟師の息子"」より
 リア充爆発しろシリーズ。

 「男女が約束を交わした後にどちらかが破ってしまい、苦難を経て贖罪する」というストーリーはヨーロッパに広く見られるようで、Fairytale的に言えば「禁令」の物語と言えます。男女版両方が存在しますが、これは女性が破ってしまうパターンです。

 ルーマニア版とマルタ版で下記のように若干違いがあります。

 ■ルーマニア版「王女と漁師」

 ・主人公は漁師
 ・主人公は成人していて、王女が一目惚れする

 むかし、ひとりの漁師がいた。あまり金持ちでなく、あまり貧乏でもなかった。若くて、ひげがピンと立っていて、たくましく、男前だった。この漁師が魚を持って宮殿の前を通るたびに、王女は呼び寄せて魚を買い、値段の十倍ものお金をやっていた。

 ・主人公がS

「私のことをまだ漁師というか?」
 むすめは咳き込んで答えた。
「ごめんなさい、私の大事なあなた。私は一度そう言いました、あれは間違いでした。もうい合わないと約束します」
「(処刑台から)おろしてくれ」
 彼は叫んだ。
「あれは私の妻だ」


 ■マルタ版「猟師の息子」

 ・主人公は猟師の息子
 ・幼少期から王女と一緒

 むかし、あるところにひとりの王様がいた。その王様には娘がひとりいたけれども、王様はやはり息子がひとり欲しいと思っていた。それであるとき王様はコックに、どこからか男の子を捜してきてくれないか、そしたら育ててやるのだが、と頼んだ。するとコックは王様に、自分は貧しい猟師をひとり知っているが、その男ならきっと息子のうちのひとりをくれるだろうといった。

 ・王女の苦難はそれほどでもない

 王女は夫のダイヤモンドの指輪を持ってきたコックから居場所を聞き、駆けつける。また、主人公の無視もルーマニア版ほど徹底して書かれていない。

 Ringlet版はマルタ版の境遇にルーマニア版の試練を足した形で仕上げました。どちらのストーリーにも共通するのは主導権を握っているのは最初は王女側で、最後に逆転するという点です。

 ふたりの名前はマルタ語に準拠して名づけましたが、このマルタ語はフランス語、イタリア語、アラビア語が混じった雑食系言語で面白い言葉です。主人公ドワードゥ(Dwardu)は英語ではエドワード(Edward)に相当しますが、最初のEが脱落しているためにまったく違う人名に見えます。ただ、後半にアクセントを落として発音してみると、たしかにドワードゥと聞こえなくもありません。
 
  結婚式のドレスは何回か出てきますが、今回は時代を考えずに現代のドレスにしてあります。中世ではこのようなフリルやレースをふんだんにあつかった衣装は極めて難しかったと思います。白が好まれるようになったのは近世以降なので、おそらく当時はカラフルなものが主流だったのではないでしょうか。(TINA)

 今回は結婚式という事でウエディングドレスも出てくる華やかな挿絵です。話中で一番見栄えする場面だったのではと思います。しかし、場面の選ぶのにはとても悩まされました。最後の処刑台のシーンとです。このシーンもとてもいいのです。最初に構図が浮かんだのはこのシーンでした。最後の最後に心が動き名乗り出るところなんか良かったと思いますね。結婚式で約束を破った高飛車なお姫様の成長も感じれます。結婚式といえば挿絵にも描いていますが、このお話の結婚式では二人でゆでたまごを食べるみたいですね。時代的に素手で食べるみたいですがなかなかおもしろい風習です。(市九紫)