オーラヴル王物語 採集地:アイスランド
「アイスランドの民話 "オッド王の物語"」より
「アイスランドの民話 "妖精ウールヴヒルドル"」より
「アイスランドの昔話 "妖精の王妃ヒルドゥル"」より
 アイスランドと言えばエッダ(Edda)サガ(Saga)が有名ですが、このふたつはどちらも子供向けとは言いがたい内容なのでRinglet版の採用基準から外れています。民話について言えば、自分が読んだ資料ではほとんどがキリスト教化された以降(十字を切ったり、イエスやマリアに祈るシーンが登場する)ものがほとんどで、エッダやサガで描かれているよりも後の時代の物語と言えます。

 アイスランドでは冬、特にクリスマスの日に起こる事件を描いた物語が多く、本編の他にも「クリスマスイヴに使用人が死ぬ農場の話(妖精の王妃ヒルドゥル)」、「毎年クリスマスの日に死人が出るという話(夜のトロル)」などがあります。妖精の王妃ヒルドゥルは継母の呪いによって人間界に使用人として働きに出なければなくなるのですが、クリスマスに妖精界へ戻るとき、「人間に魔法の手綱をつけ、馬として利用する」という描写が出てきます。アイスランドには「人間に手綱をつけて使役する(ガンドレイズという)」魔法がたびたび登場します。

 アイスランドの季節感覚は夏季と冬季の二期制で、"冬の間、逗留を求める客"は古い文学によく見られるキーワードです。長く厳しい冬にさらされる同国では、おそらく、実際にそういう慣例があったのでしょう。

 原版では冬の客と王様との間にあったやりとりついて、下記の通り詳細に書いていますが、六年間も殺され続けた冬の客が特になんの努力も払わなかったという点だけは気になります…。

 秋にひとりの男が宮廷にやってきて、冬の滞在客として置いてくれるように願い出た。王様はそれを認めてやったが、条件として、客人は夏の最初の日に彼、つまり王について民衆のあいだに知られていることよりも詳しことをその素性について報告できなければならぬ、ということを課した。それができなければすぐに処刑させる、と。冬の客は、できるならばそうしましょう、と約束した。さて、冬は過ぎるが、冬の客は王について何も目新しいことはつかめず、王について何も耳にせず、別段そのための努力もほとんどしなかった。夏の最初の日、王様は彼を前に呼び、彼がここにやってきたときよりも、いま、王について何か多くのことを知っているか尋ねる。冬の客は、秋より、また宮廷のすべての人々に知られていること以上には本当に何も知りません、と言う。王様は、条件はまえもって知っていたな、と言い、その男を処刑させる。人々には、王様はおくびにも出さなかったが、そのひどい近いを冬の客に対して果たさなかったなければならなかったとき、つらく思ったことが解った。(中略)同じ事がこうして六年も連続して起こった。

 また、あとがきによると、原版「オッド王の物語」には後日談があったと書かれており、「その後しばらくして、新しく選ばれた王様が食卓についているとき、まったく思いもかけず、女王の豪華な衣装をまとった女性が部屋にはいってきた。王様は……」という一文が残っているようです。Ringlet版ではこの導入部をベースに「妖精ウールヴヒルドル」の後半部分を繋げてみましたが、おそらくオリジナルも同じような話だったのではないかと思います。

 ヴァイキング王(女王?)エルセ。当時の一般的な戦闘服であるチェインメイルとラウンドシールド、防寒のためのサーコートを着ていますが、戦に必須の兜はキャラクタが解らなくなるためカットしてもらいました。バイキングといえばホーンヘルムが有名ですが、あれは後世の創作で、実際はごくふつうの兜を身につけていました。(TINA)