| 半人前ジンニーヤー | 採集地:サウジアラビア(?) |
| 「アラビア物語U "マーラドカは半人前"」より | |
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はっきりとした採集地は不明ですが、原版は「昔、サウジアラビアのジッダの港町に〜」と始まります。ジッダは紅海に面するサウジアラビア第二の都市であり、交易拠点の港町として繁栄してきた歴史があります。 明らかに子供向けの内容で、かなり後世の物語だと考えられます。 典型的なサクセスストーリーですが、力添えしてくれるジンが未熟なためにコミカルなストーリーが展開されます。危険なシーンにも危機感は薄く、微笑ましい形で切り抜けていますし、オチも「半分は叶えた」というよく出来たものになっています。 本編で力を貸してくれるジンはイスラーム圏での一般的なイメージに近いもので、その点でも興味深い話になっています。本編中でも語られる一般的なジンのイメージは下記のような感じでしょうか。 ・煙のような身体を持っていて、魔法を使うことができる。 ・壺に閉じ込められている。 ・壺を開けてくれた人間に恩返しをしてくれる。 ・壺に閉じ込められたのはソロモン王の怒りをかってしまったから。 私たちは壺に封じ込められたジンと言えば「アラジンと魔法のランプ」をまず思い出しますが、そもそもジンはイスラーム以前からの非常に広い範囲を指す言葉で、悪魔、幽霊、得体のしれないものなどは、とりあえずなんでもジンとされます。イスラーム以後は異教の神々(=妖精や精霊など)もジンの仲間入りをしました。 イスラームでは「悪魔(のジン)は火から創られた」とされていて、煙状の気体の身体を持つイメージや火を操る能力を持つのが多いのはここから来ていると想像できます。余談になりますが、イスラームでは火は地獄や罰といった負の側面が強いシンボルです。 4つ目のソロモン王(イスラーム圏ではスライマーン)については少し知識が必要です。 Ringlet版ではカットしましたが、本編のジンは壺に閉じ込められていた理由を「ソロモン王にやられた」と語っています。イスラームはユダヤ教とキリスト教を下敷きにしていますから、ここで言うソロモン王は古代イスラエル王で「霊たちを使役できた」という伝承をそのまま輸入した形になっています。 このソロモン王は大抵の物語の中で強い力を持っていて、彼の名前や持ち物(多くの場合は指輪ですが)はジンたちを従わせる能力があるとされています。 魔法を使う、人間に恩返しをしてくれるのは西洋の妖精たちとそう変わりがないところです。歴史的な認識もだいたい同じで、時代が下るほど恐ろしく強大な強さを持つイメージは薄れ、愛嬌があって親しみやすく、コミカルな性格になって行きます。そういう意味でも、このストーリーは新しい時代のものでしょう。 原版ではジンの名前は「マーラドカ」と言っておそらく男性ですが、Ringlet版ではエルセにあわせて女性形のジンニーヤーとしました。 |
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願いそのものが「半分になる」以外のペナルティがないというのは、実は結構すごいジンのような気がします。 イスラーム圏では陶器の壺が多目的に使われていて、ジンを閉じ込める以外でもよく登場します。(TINA) ケモ娘に続きドジっ娘シナリオでびっくりでございました。 そのまま絵本のお話にできそうなかわいらしいお話で、これまでのシナリオの中で最も好きなもののうちの一つです。(宣教師ゴンドルフ) |
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