島から来た魔法使い 採集地:アイスランド
「アイスランドの昔話 "ヴェストマンナエイーヤルの魔法使い"」より
「アイスランドの昔話 "ティルベリ"より」
 リア充爆発しろシリーズ。

 発音が難しいことで知られるアイスランド語の特徴がタイトルから現れています。原版タイトルのヴェストマンナエイーヤル(Vestmannaeyjar、英語で言えばWestman Islands)はアイスランド本島の南にある諸島で、アイスランドのFairytaleではたびたび舞台として登場します。また、Ringlet版では改変されていますが、話の冒頭部分では「黒死病(ペスト)がアイスランドで猛威をふるっていた頃」という一文があります。文献によれば、黒死病はアイスランドでは1402年に初めて認められ、その後大流行したとあります。よって、このFairytaleを歴史の枠にはめ込むなら1402年以降、1405-1415年頃の話ということになります。

 この話はアイスランドFairytaleのエッセンスを凝縮したストーリーと言えます。Ringlet版でも細部を加筆した程度で、大枠の変更はありません。

 冒頭を読み進めていくと、すぐに「十八人の魔法使い」というテキストに目が行きます。バックグラウンドは定かではありませんが、アイスランドでは「18」という数字がマジックナンバーとしてよく使用されます。

 ストーリーに一貫性が見られないところも(偏見かもしれませんが)アイスランドのFairytaleによく見られる傾向です。この話でもセンディングが送られる経緯まではともかく、その後のセンディングの間抜けな対応や最後の場面で突然現れるヒロインの養父については首を傾げざるをえません。(もちろん、筋道が通った話もそれなりにあるのですが)

 魔法使いが使役するセンディング(Sending)は幽霊の一種と書かれていますが、アイスランドの幽霊観によれば、死後、自らの意志で戻ってくるものをアフトゥルガンガ(Afturganga/戻ってくるもの、という意味)と言う一方で、生きている人間(主に魔法使い)の意思で呼び戻される式神的なものをUppvakning(蘇らせられたもの)、Sending(送られたもの)と呼んで区別しています。(※Sendingは英語のように思えますが、アイスランド語で"送る"はSendaと言います)

 幽霊とは少し違いますが、アイスランドの超自然的存在、あるいは日本風に言えば式神のようなものにティルベリ(Tilberi)スナックル(Snakkur)と呼ばれるものが存在します。アイスランドの昔話にはその造り方が載っていて、それによると、「人間のあばら骨にねずみ色のもつれ毛を巻き、聖餐式で出されたワインを吹きかけて造られる」とあります。ティルベリには知能があり、(今回のセンディングのように)自分で物事を考えたり口をきいたりもします。弱点は異教徒らしく十字架や聖遺物、聖なる数字(キリスト教の場合は3)とされていて、ティルベリたちがキリスト教以前の土着的宗教の産物だということが想像出来ます。

 純粋にストーリーを見た場合、魔法使いであるヒロインが魔法によって(あるいは養父の加護によって)一人疫病から逃れた後、やってきた主人公を娶ったという肉食系女子な話になるんでしょうか。爆発しろ。

 アイスランド民族衣装のひとつ、Upphlutur(非常に難解な発音のため原文ママ)を着た魔法使いの養女エルセ。モップのような飾りのついた帽子が特徴的です。髪型も自由にとお願いしたところ三つ編みになりました。周囲がペストで倒れていったのち、ひとりきりでどんな生活をしていたのかが気になります…。(TINA)

 お下げっ子です。アイスランドの民族衣装です。THE 北欧の衣装というような雰囲気です(私の中で)。 ポイントは帽子と胸元の飾りですかね…? 帽子の房が特徴的な感じです。そして服装以上に特徴的なのが挿絵の家です。屋根の上に草が生えております。すごいですね…。全体的に緑色で目に優しそうな家です。ちょっとだけ住んでみたい。(かずしま)