| 羊飼いと裁判官 | 採集地:フランス |
| 「フランス民話の世界 "こぶた"」より | |
| 形式譚、あるいは積み上げ話、だんだん話、連鎖話という類の話です。歌になっているものも多く、ストーリーに特別意味はありません。ほぼ原版通りですが、Ringlet版ではいくらかマイルドにしてあります。例えば、棒は子犬を「叩く」ことになってますし、裁判官は肉屋を「殺す」とあります。原版はフランス民話からですが、イギリスにもほぼ同様のストーリー「お婆さんと子豚/The
Old Woman and Her Pig<※1>」(JacobsのEnlish Fairy Tales)の記録があります。こちらはもっと長くて、豚→棒→火→水→雄牛→肉屋→縄→ネズミ→猫→雌牛で雌牛に干し草を与えると折り返します。 また、この形式は世界中に無数のバリエーションが存在します。世界の民話1「ドイツ・スイス編」(ぎょうせい)では「アブラハムとアブラメッサ」という話で、兄妹の話を面白く書いていますし、English Fairy Talesではネコとネズミの話が収録されています。後者を簡単に書いておきます。 ネコとネズミが遊んでいると、ネコがネズミのしっぽをかじりとってしまいます。ネズミはそれを返すよう言いますが、ネコは牛からミルクをもらってくるまでは返さないと言います。牛は農民から干し草をもらってきて欲しいといい、農民は肉屋から肉を、肉屋はパン屋からパンをもらってくるようネズミに言います。パン屋がパンを渡したところから折り返し、最後にネズミはしっぽを返してもらえました。 もう少し違った形式として「Titty Mouse and Tatty Mouse/姉さんねずみともじゃもじゃねずみ<※1>」、「The Wee, Wee Mannie/ちっちゃい、ちっちゃいマニー少年<※2>」も収録されています。同じくJacobsのCeltic Fairy Taleに「Munachar and Manachar/ムナハーとマナハー<※3>」というものもあります。フランスでは「花を咲かせたがらなかった小さなキャベツ」、スペインでは「蟻の結婚の話」、旧チェコ=スロバキアでは「かわいいメンドリ」、スウェーデンでは「家に帰ろうとしなかった山羊」、ノルウェーでは「なんて大食いのトラ猫」、リトアニアでは「雄鶏は窒息しました」など様々に伝わっているようです。 折り返さないパターンも存在します。Ringlet the Fairytaleではこのパターンとして「世界で一番偉い猫」を収録しました。上記のEnglish Fairy Talesでは「Johnny-Cake/とうもろこしパン<※1>」が、また、De Leeuw, HenrikのJava Jungle Talesにも一方通行の形式譚が収録されています。 <※1>邦題は「トム・ティット・トット イギリス民話集1」 東洋文化社 1980年より |
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