| 大頭 | 採集地:北アメリカ、オンタリオ湖東 |
| 「世界神話伝説体系 北アメリカの神話伝説3 "大頭"」より 「アメリカ・インディアンの民話 精霊と魔法使い "巨頭"」より |
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出典にはイロクォイ族とありますが、これは今日では一般的にイロコイ連邦またはシックス・ネイションズとして知られる六部族連合を指します。どの部族に伝わる話なのかは解りませんが、広く共有されている話かもしれません。 出典のひとつである「世界神話伝説体系 北アメリカの神話伝説3」には簡単な解説が載っていますので、そのまま引用してみます。 イロクォイ族は「大頭」(Flying Head、Big Head、あるいはGreat Head)という怪物の存在を信じています。 「大頭」は、胴体や手を持っていません。ただ大きな頭が、二本の足の上に乗っかっているだけです。険しい岩山の上に住んでいます。 そして、人間の姿を見さえすると物凄い声を出して、 「俺はお前を見たぞ。 俺はお前を見たぞ、お前は死ななくてはならぬ」 と叫ぶのでした。 実際に大頭には邪視の力を持っていて、物語中でも睨んだフクロウが死んでいます。 しかし、その力を人間に使うことはなく味方として登場しますし、好物は「楓の木」という意外な一面も見せていて、なかなか魅力的なキャラクターと言えます。 古い伝説の「大頭」は部族の若い衆に謀られて殺された老人であり、明確に敵対的存在なので、このイメージは時代の流れに伴って変化した結果と考えられます。睨んだ生物を殺す能力はこの伝説の流れをくんでいるのでしょう。(一般論として、邪悪な存在は時代が下ると柔らかくなり、コミカルな役回りになったり、味方として登場したりするようになります) もうひとつの出典「アメリカ・インディアンの民話 精霊と魔法使い」に収録されているストーリーは大枠では同じですが、こちらはより物語風に仕上がっています。先述の世界神話伝説体系版との差異を書き出しておきます。 ・登場人物に名前がついており、主人公は「小さい鹿」、主人公の父親は「はぐれ狼」、伯父は「深い湖」、大頭の弟は「腐れ片足」となっている。 ・冒頭、主人公の両親が病で死に、それから伯父に預けられたと語られている。 ・中盤、伯父は兄弟を殺したのは巨頭だと考えていて、弟に巨頭を連れてきてもらうように策をめぐらす。 ・巨頭は、自分は勇士や子供は殺さないが、魔女は無差別に自分の二倍も三倍もの動物や人間を殺した悪いやつだと主張する。(逆説的に言えば、巨頭もなんらかの事情で人間を殺すことはあるらしい) ・魔女の呪文を破る方法が具体的に書かれている。 →歌を聞かないように、耳にクローバー(※1)のつぼみをつめる。 →「いつからここに住んでいる?」と尋ねると魔法を無効化できるが、代償として髪が抜ける。 →魔女の肉片に動物名を叫んで投げるとその動物に変わるので、魔女を細切れにして殺害する。 Ringlet版はこちらをベースに、シーンをいくつかカットして短くしました。 (※1)歴史的キーワードとしては耳に詰める「クローバーのつぼみ」が挙げられます。クローバーはヨーロッパ大陸から持ち込まれた植物で、持ち前の繁殖力であっという間に定着しました。 |
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大頭、ものの資料ではボサボサ長髪なので拾ってつけるのは大変だったんじゃないかと思います。死なないとはいえ、強制的にハゲにしてくる魔女の歌は恐ろしい…。この話で一番割りを食ってるのは伯父だと思うんですよね。見当は外れてたましたし、復讐に名乗りを上げても年寄りだからダメと言われてて。(TINA) 今回挿絵を手掛けさせていただきました、悠城です。(テンプレ) 復讐に燃え上がる少女という事で、結構キリッとした感じにしました。描くの楽しかったです。(悠城) |
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