粉挽き屋の娘ダリル 採集地:アイルランド
「妖精 Who's who "少年ポードリグとプーカ"」より
 家やその周辺には無数の妖精がいるとされていました。手にした記憶がないのに勝手に物が動くのも、家畜たちの具合が悪くなるのも、妖精たちのせいだと言われました。大雑把にいって、妖精の種類には(たまに悪戯をすることもあるが)家事を手伝ってくれるものと、ひたすら暴れ回り、不吉を運んでくる二種類に分かれていました。また、家や土地に憑くタイプ(誰がそこに住んでいるかは関係ない)と、人に憑くタイプ(気に入った人がいれば、例えその人が遠くへ引っ越してもその場に現れたと言う話があります)でも分けることが出来ます。このストーリーでは、何百年も前から住んでいると言っているので、土地に憑くタイプなのでしょう。

 パックとはブラウニーの一種で、かなり善良な部類のFairyです。働いている妖精にお礼(主に服)を与えると、消えてしまうというのはどこの地域でもおおむね共通した約束事ですが、お互い後々まで気にかけていた、という結末は珍しい気がします。こういうストーリーの場合、妖精は堕落した天使だったり、旧教の神だったり、幽霊(妖精と幽霊の境は非常に曖昧です)だったりするのですが、共通項として「過去になにか悪いことをしたので償いのために無償に近い形で労働している」ということです。そのお礼が洋服(あるいはそれに準ずる物)である事が多いことにも諸説あるようですが、いずれにしろ重要なテーマではないのでRinglet版では割愛しました。

 作中に登場する蜂蜜酒(ミード/Mead)は中世欧州で一般的なお酒でした。地域にもよりますが、ワインより安価に売られていたとあるので、彼らのような人たちでも入手しやすかったことでしょう。その他、女性が大学を出ると言うことはこの時代まずありえなかったはずですが、そこはRinglet世界と言うことで。