| ザンガベーレガの物語 | 採集地:コンゴ民主共和国(旧ザイール) |
| 「エーリアの火 "ボイッタードンゴの物語"」より | |
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モンゴ族(Mongo)というバントゥグループに伝わる人類誕生の神話です。 モンゴ族はコンゴ(旧ザイール)に住む焼畑農耕民で、主食のタロイモ(現在はキャッサバ)や、バナナ、とうもろこしを栽培し、後者ふたつからは火酒(ロトコ)も作るようです。独自の宗教、習慣上の一夫多妻制を持ち、フィールドワークを行った筆者によると「成人男性はサワガニを食べない」など、細部に渡って取り決めが存在しているようです。 ボイッタードンゴ(ウターネンゴ、ボロンガ、ボンドンガ、バンジャカンジャカ、イココヨーコンベ、イクンバーデンゴなど、名前は語り手によって異なるらしい)はモンゴ族の始祖であり、すべての人間は彼の子孫と考えられています。 モンゴ族の世界観によれば、人間に似た存在としては他にチンパンジー(エーリア)、インゴロンゴロ(世界にひとりしかいないとされる強大な呪術を扱う存在。ストーリーに寄っては複数いる。たいていは邪悪だが善良な場合もある)、エレンバ(人食いと訳される、明確な人間の敵)の三種類がいて、その世界の中で生きているとされています。 ボイッタードンゴの物語は語り手によってかなりバリエーションがあるようですが、大まかな流れとしては英雄の父の死に始まり、誕生、仇討ち、動物界と人間界の征服、邪魔者(インゴロンゴロ、エレンバ)の征伐、月、星、太陽までの道を切り開き、世界に光をもたらして終わるというものになっています。 主人公の名前が複数あることからも解るように、語り手、あるいは地域による相違が多く、物語に登場する兄弟姉妹の数も一定しませんが、重要なのは主人公ボイッタードンゴであり、その他は脇役以上ではないということかもしれません。 Ringlet版では父親の復讐を遂げ、動物界と人間界を征服してから生き別れの兄と戦う中盤の章をピックアップしました。 また、物語の都合上、登場人物の性別を反転させました。本来は兄弟の物語であり、それに姉妹が付き従う形になっています。 この物語からはモンゴ族の様々な側面を垣間見ることが出来ますが、ふたつだけ記しておきます。 最終決戦で兄弟ふたりが使用した刀(イポペ)は、形状は一定しませんが湾曲または屈曲をもち、外側ではなく内側に刃がついているのが特徴の刃物です。屈曲部に引っ掛けるようにして敵の首や足首を攻撃するようです。また、盾は出てきませんが、写真資料では1メートルを超えると思われる大型の盾を利用していたようです。素材のボカウ(蔓性ヤシの茎)を裂いて編み上げて造られました。くの字に折れ曲がったものが多く、威嚇のために地面に打ち付けながら戦ったようです。モンゴ族の戦いはベルギー人が入ってくるまで頻繁に行われていたらしく、森のあちこちに古戦場の言い伝えがあるそうなので、好戦的とは言わないまでも、戦いが日常茶飯事だったことは伺えます。 また、モンゴ族でもアフリカ他部族と同じく、カンガ(呪術師)と鍛冶師は特別な存在のようです。本編では呪術師がアドバイザーとして活躍していますが、彼らは他にも結婚に必要な金属器、酒楼道具、武器などを製造していました。非常に貴重な存在で、どこでも丁重に扱われたようです。 |
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創世神話および人類誕生の神話はどの民族、部族にも必ず存在するものです。モンゴ族の神話で面白い点は、原版に登場する女性はすべて、ボイッタードンゴを生んだ母も、彼と兄の参謀役として帯同している姉妹も、動物を夫としている点でしょう。この点ではさらに深い研究ができるかと思います。また、彼らにはスカリフィケーションの伝統があるようなので、キャラクターにもそれを反映してもらいました。本来ならその模様にも意味があるはずなのですが、残念ながらそこまでは理解が進まなかったのでフィクションになっています。(TINA) 私にとってはアフリカ篇記念すべき二つ目です。前回の豹娘に比べたらかなり服を着てます(これでも)。 どちらも挿絵では隠れてしまいましたが鎌と羽の冠がポイントです。お話はとにかく強い姉妹のお話です。各所で動物の精霊が出たり強い大群が出たりとアフリカらしいですね。 最後の終わり方が神話の様で好きなお話ですが、君たちどんだけ強いの?? って読む度に思います。(市九紫) |
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