| 棺桶屋イアンと幽霊たち | 採集地:アイルランド |
| 「アイルランドの民話 "ダニエル・クローリーと幽霊たち"」より | |
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リア充大爆発しろシリーズ。 エルセの立場上、幽霊に関するストーリーは極力省いているのですが、Fairytaleを語る上で幽霊は外せないのでこの話を収録しました。 よく解らない存在という点において、幽霊は妖精や天使や悪魔やその他精霊と呼ばれるものたちと大差ありません。彼らは主人公たちの力になってくれることもありますし、恐るべき敵として登場することもあります。けれど「妖精と結婚した話」は時折見られるものの「幽霊と結婚した話」は欧州圏ではあまり見られません。幽霊と妖精の間には明確な一線が存在することを表していると言えるでしょう。(最近では幽霊が彼女とか同棲とか結婚なんて珍しくもなんともないですが)一方、日本では(Fairytaleに分類するかどうかは難しいのですが)落語「天神山」の中に幽霊と結婚した男の話を見ることが出来ますが、やはり全体としては少数なようです。幽霊と添い遂げる話は中国に多くみられるので日本はその影響を受けているのでしょう。 「スイス民話集成」では幽霊がこの世にとどまる理由が日本と西洋では異なると述べられています。日本では怨恨に拠るものが多いのに対し、西洋(キリスト教圏)では天国に救われるための罪滅ぼしであることが多い。なので、彼らのせりふも「うらめしや」ではなく「ああ、哀れなる我が魂よ」である、とまとめています。こうしたキリスト教の価値観を考えると、このストーリーはもっと俗っぽくて本能的なものに働きかける話だと言えるでしょう。(アイルランドといえばケルトを連想させますが、カトリックが早くに普及した場所です) 出向いた通夜で一悶着ある前半部分はほぼオリジナルのままですが、家で繰り広げられた死者たちの宴会部分はかなり改変されています。棺桶代を支払えなかった女性(エドナ)が出てくるところまでは同じですが、オリジナル版では主人公はそもそもこの宴に乗り気ではなく、どうにかして穏便に退散願いたいと思っているところから違います。宴会もうるさいもので、自らの腕の骨を掴んで殴りかかったり、酔って頭蓋骨を蹴飛ばしたら壁まで飛んでいったりします。エンディングは乱闘にした宴会の中で、幽霊に一撃をくらってのびた主人公が朝起きると、誰もいなくなっていたというものです。 "ダンスの相手で騒乱状態になり、「武器になる棍棒がないので」左腕の骨を外し、それを振り回しながら踊りかかった。 後半部分は落語「天神山」の冒頭部分をアレンジしてつなげました。オリジナル「天神山」は、墓から頭蓋骨を持ち帰った男の元に幽霊があらわれ、逆縁(※仏教で言う人間の倫理に反する言動や行為)ですがよければ女房にしてくださいと頼みます。主人公の男は変わり者で通っていたので、その話を二つ返事で了解した、というストーリーです。ここで男性は幽霊を妻にするメリットとしてお金がかからないことを挙げていますが(三度の食事はいらない、整髪の油も服も、足がないので靴下も靴もいらないと言われています)、これは省略しました。 |
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![]() オリジナルエルセと同じ幽霊なエドナ。髪型はそのままですね。服装は好きにできるので二通り書いてもらいました。前半は生前の私服で、一般的な庶民の格好をしています。後半は結婚装束ですね。やや現代的ですが、(庶民がお目にかかる機会があったかどうかは別として)王族のドレスやヴェールは何百年も前から素晴らしいものでした。挿絵版では頭にサンザシの花飾りを追加して、体型を幼くしてもらいました。エドナはぺったんこ。なお、このストーリーからキャラデザを簡略化してもらってます。(TINA) 庶民な格好はすんなり決まったんですけど、ドレスが大変でした…。なんでも着れる設定なのでできる限りゴージャスに。刺繍で高級感を出したつもりです。つるぺたに描いたつもりだったんですけど、さらに減らせ! とのお言葉が。滑り落ちそう。(かずしま)
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