| TINA的あとがき ここは少しだけ真面目で難しいことが書いてあるあとがきです。メジャーリリース毎に1つ書き足していけるよう頑張ります。 |
| 01.繰り返し表現と兄弟の話 02.物語の境目 |
| 01.繰り返し表現と兄弟の話
神話や民話では繰り返しのモチーフが多用されます。不思議なことに、その回数は地域を問わず3回が一般的です。ストーリーによっては5回や7回、9回の場合もありますが、前提は奇数であることで、ごくごく希に6回や12回ということがあります。 この「3回繰り返す」ことの意義については専門書に任せるとして、この「繰り返し」は大きく分けて「3回連続で成功する」パターンと「2回は同じ結果に終わるが、最後は反対の結果になる」パターンにわかれます。(3回連続で失敗する、という話もあっても良さそうですが、残念ながら例を知りません)後者はさらに「2回成功するが最後で失敗する」パターンと「2回失敗するが最後で成功する」パターンに分類することが出来ます。 「3回連続成功する」ストーリーなら、だんだん難しくなっていく試練を乗り越えて成長する主人公を上手く表現できます。「2回成功するが最後で失敗する」パターンは主に狡賢い悪役が最後の最後に失敗して懲らしめられる、という展開で使われます。「2回失敗するが最後で成功する」パターンは、これが最もよく使われるパターンなのですが、立ちはだかる試練がどれほど困難であるかと、主人公が知恵と勇気でついにそれを打ち負かす、という盛り上がるストーリー展開が期待できるでしょう。 「3回の繰り返し」は語り手的にも実に都合のいい回数で、適度に長く、しかし飽きさせるもことなく、聞き手をパターンに誘導することが出来ます。例えば「3匹の子豚」がもし5匹や7匹の子豚だったら、語り手は家の材質を余計に考えなければなりませんし、聞き手は「どうせこの家もダメなんだろう」と中だるみしてしまうかもしれません。 Ringlet版制作にあたって頭が痛いのは最後の「2回失敗するが最後で成功する」パターンです。もっともよくある展開は「三人の息子(娘)が〜(あるいは、三人の王子(王女)が〜)」というものなのですが、この手のストーリーは例外なく長兄から旅立って行きます。もちろん長兄と次兄はヤムチャ的役割を背負わされて失敗する運命にあるのですが、ほとんどの場合、彼らの失敗は次回にフィードバックされることはありません。また、二人の兄は性格的に問題がある場合も多く、末の弟に助けられた後、その手柄を横取りしようと亡き者にしてしまう場合すらあります。対して末の弟(=主人公)は知恵と勇気と体力に優れ、大変真面目で人徳もあり、イケメンリア充という言葉がぴったり当てはまるような若者です。しかも、時には自分を手にかけ(ようとし)た兄達を赦すことすらあるという器の大きな男だったりするからたまりません。 長男である自分としてはこういう物語がもてはやされることには危機感を覚えざるを得ません。ジャギ様のように「兄より優れた弟など存在しない」とまでは言いませんが、たまには血気盛んな弟が最初に旅立ってもいいんじゃないか、試練に失敗したとしても攻略の糸口を見つけて「兄たちの協力がなければ自分も同じ運命をたどっていた」みたいなストーリーがあってもいいじゃないか、と思うわけです。残念ながらそのようなストーリーは(数種類ありますが)とても少なく、Fairytaleにおいて主人公サイドの兄、姉という存在は永遠に負け組だったりします。上って辛いよね。お兄ちゃん(お姉ちゃん)だから我慢しなさいとか平気で言われるもんね。 |
| 02.物語の境目
Ringlet the Fairytaleでは神話、物語、民話という言葉を曖昧に使用していますが、国語辞典によれば、それぞれ神話=「宇宙・人間・動植物・文化などの起源・創造などを始めとする自然・社会現象を超自然的存在(神)や英雄などと関連させて説く説話」、物語=「特定の事柄の一部始終や古くから語り伝えられた話をすること。また、その話。「湖にまつわる―」」、民話=「民衆の生活の中から生まれ、民衆によって口から口へと伝えられてきた説話。昔話・伝説など。民間説話。民譚(みんだん)」と説明されています。 自分の感覚で大雑把に分類すると、次のようになると思います。身近な題材から生まれたノンフィクション分を多く含むもの=民話、民話が年代や口伝を通じて定型を与えられる=物語、物語に神や英雄が絡む=神話と言えば、それほど間違っていないと思います。もう少し違った切り口で見ると、民話はハッピーエンドで終わる可能性が最も低く、逆に物語は最も高い気がします。神話は五分五分でしょうか。 宗教絡みの話を出来るだけ排除するという編集の都合上、Ringlet the Fairytaleでは物語と民話の蒐集に力を入れています。 |