| 楽天家ジュリオ | 採集地:イタリア |
| 「アンドルー・ラング世界童話集 第五巻 ももいろの童話集 "幸運のドン・ジェバンニ"」より | |
| イタリアでは有名らしい民話「悪魔のズボン」の亜種ですが、Ringlet版の基準により合ったラング版を採用しました。それによると、原版はシチリアの昔話だそうです。 「悪魔のズボン」では、まずお金が出てくるのは袋ではなくズボンのポケットで、悪魔は主人公(サンドリーノ)に「七年貸すからその間、一度もズボンを脱いだり、髪を切ったり身体を洗ったりしたらいけない」という条件で取引を成立させます。その後は収録版と似たような経緯をたどりますが、王様の娘は二人ではなく三人だったり、エンディングではちゃんと悪魔がズボンを取り戻しに来ます。そこで「お前の魂をもらう約束だったが」と言った上で、「代わり(=二人の姉)の魂をもらったのでお前は見逃してやる」と言って去ります。そして、翌日、二人の姉は「お前達(=主人公と一番下の妹)のせいで、私たちは(死んでしまう)」という書き置きを残していなくなっていました、というなんとも後味の悪い落ちを迎えます。スイス版では「弟分のライデ」という話で、悪魔は二人の姉の魂を奪い取り、「さて、弟分のライデよ、おまえさんは一人を手に入れたし、俺さまは二人手に入れた。これで俺たち二人とも甲斐があったっていうもんさ!」と言っていますので、こちらの形の方がより広まっている話なのかもしれません。たしかに、これだけのことをしてくれたのですから悪魔にもそれなりの報酬があってもいいですね。 ラング版はそう言った暗さは綺麗さっぱり失われていて、ひたすら前向きで楽天的なストーリーになっています。Ringlet版では肖像画家のシーンと最後の二人のやりとりを加えた他に、ひとつ歴史の勉強としてユリウス暦がグレゴリオ暦に改訂された話を繋げました。(Ringlet世界は現実世界とは異なるのですが、Ringlet世界でも改訂されています) これは1582年に起こった出来事で、当時の暦であったユリウス暦が実際とは1年に0.0078日(約673秒)ほどズレていたことに起因します。たかが673秒とはいえ、1000年以上利用されていたユリウス暦のズレは10日近くになり、無視できない問題になってきました。特に(間違った日にお祝いをしているわけですから)祝日がずれている問題は深刻で、時の教皇グレゴリウス13世が1582年に思い切った決断を下しました。教皇はユリウス暦を廃止し、「同年(1582年)10月4日(木曜日)の翌日を10月15日(金曜日)にする」と宣言しました。これが現代のグレゴリオ暦の始まりです。実際には同年2月に告知されていたのですが、少なからぬ混乱をもたらしたようです。 ※主人公がエルセに太陰暦から太陽暦になったようなものと説明していますが、ユリウス暦もグレゴリオ暦も太陽暦であり、これは少し違います。 それ以外のシーンはほぼオリジナルをなぞっています。唯一異なる点は、原版では上の姫と母(王妃様のことです)はイケメンになった主人公を見て「嫉妬と怒りのあまり」死んでしまうのですが、なにも死ぬことはないと思うので失神する程度におさえてあります。このストーリーに限らず、昔話は憤死がよくあります。みんなそんなに簡単に死んだんでしょうか。 |
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![]() 真夜中にもかかわらず馬で駆けつける一途な王女様。それでもちゃんとおめかししてるあたりはさすが。衣装はシチリア島の伝統衣装の一種です。腰の飾りが印象的ですね。また、スカートの模様も金糸で刺繍されるのが一般的で、非常に華やかな衣装と言えます。挿絵では切れてますが、さすがにヒールで乗馬はないんじゃないかな…、ということで靴はちゃんとしたのを履いてるはずです。また、スカートを履いた女性が騎乗する場合、鞍をまたがず横座りの姿勢で乗るサイドサドルという作法がありますが、このエルセは挿絵の髪が乱れているのを見ても解るように、普通に乗って来ました。(TINA)
フリルが沢山ついていてとても可愛らしい感じの衣装です。頭のリボンと胸の前についているお札のような飾りが特徴的な感じですね。胸の前の飾りはどうやって固定しているんでしょうかね…? スカートと飾りが赤、シャツが白、刺繍が金色という設定なので、カラー化したときとても派手になる服だと思います。あわてて馬に乗って駆けつけてきたシーンが挿絵でしたので、髪の毛の乱れ具合をどうするかで悩みました…。あまり乱れさせると誰だこれ状態になり、なんというかエルセは横髪部分が大事だということを実感。(かずしま)
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