| 靴屋の美しい上客 | 採集地:イスラエル(※) |
| 「世界の民話18 "美しい花嫁"」より | |
|
リア充大爆発しろシリーズ。 一言で言えば脚フェチのストーリーです。 Ringlet版では後半部分、妻に騙されて偽の娘と結婚するストーリーをカットして振られる流れに変更しました。 原版ではこの娘は家柄は良いもののシラミ持ちの皮膚病患者で人間の言葉も話すことが出来ない(おそらくは聾唖者)とされていて、父親は娘はそのようであると念を押した上で厄介払いが出来ると喜びもします。靴屋はそれでも結婚を熱望して承諾されますが、すぐに自分が騙されたことに気づいて花嫁のもとを逃げ出し、妻にどうにかして離婚できないものかと泣きつきます。彼女は身なりの貧しい人を複数人雇って押しかければ良いと答えます。果たして、ならず者の一行を見た族長は結婚を破棄して娘を自分の元に戻しました。この解決方法はアラブ民話では有名らしく、複数のストーリーで使用されています。 同じオチを採用している『女たちの手練手管』(アラブの民話)では、それぞれ独り身の男女がお互いを騙そうと知恵を巡らせますが、女の方が同じやり方で男を騙し、偽の自分と結婚させます。偽の娘は判官(カーディー)の娘という地位ある女性でしたが「頭は禿げていて、足はちんばで、目は寄り目で、手足は曲がっている」「やぶにらみの片端で皮膚病持ち」などと、およそ考えられる限りの醜女でした。困った男は女に解決方法を請います。そこで、彼女は「ジプシーの一族を雇って親族のフリをしてもらえば、向こうから離婚を要求してくる」と教えました。果たして、話はそのとおりに進み、すっかり懲りた男は、今度は相手をしっかり確認した上で知恵ある女性と結婚したというものです。 面白いのは結婚も実家に帰るのも「許可の証文」を書かせているところで、イスラームは早くから紙が普及したおかげで識字率が高かったこと、契約社会だったことを反映していると言えます。 (※)原版の語り手はトルコからイスラエルへの移住者なのでおそらくユダヤ教徒だと思いますが、本文中にユダヤ教色を感じさせる部分はありません。それどころか、ヒロインは外出時にヴェールをすることや夫が妻帯者であるにもかかわらず新たな妻を娶ろうとしていることから、この夫婦はムスリムだった可能性が高いと思われます。(ユダヤ教にヴェール着用の義務はありませんし、表向きは一夫多妻制でもありません。ただし、慣例としてはかなり後代まで許されていたとされています) |
|
![]() |
|
| Ringlet版ではゆるくなっていますが、かなり悪い女のエルセ。これだけ頭が回るならもっと穏便に片付ける方法も思いついたはず…。ですが、その方法が「あらためて自分に惚れさせる」と考えると、なかなか可愛い気もしてきます。個人的には結構好きな性格。(TINA) | |