ジルダ 採集地:不明(スイス、イタリア?)
「アンドルー・ラング世界童話集 第六巻 はいいろの童話集 "ボビノ"」より
 原版の出典不明作品でオリジナルが突き止められませんでしたが、欧州のおそらく中央より南の話だと思われます。
 スイス民話集成に同じ形式の話「利口なハンゼ」として、別のスイス民話集にも「かしこいアロイス」として収録されているので、その辺りかもしれません。

 オリジナルは主人公はボビノという商人の一人息子で、動物の言葉しか学ばなかったために勘当されて家を追い出された後、その能力を駆使して各地を渡り歩き、最後には街の長官(英語版ではKingとなっています)におさまるというストーリーになっています。Ringlet版では主人公を女性に、最後は兄のためにその能力を使うというふうに変更しました。

 オリジナルと大きく異なる点は二点あります。一つは原版では逆上した父は息子をただの勘当ではなく「殺せ」と明確に指示している点で、それを受けた従者が「飼い犬を殺してその心臓を持ち帰れば騙せます」と主人公に答えるシーンを削除していることです。原版には犬を殺すシーンは描かれていませんが、ボビノが動物の言葉を理解できることを踏まえての発言だとすればなかなか残酷なシーンだと言えるでしょう。
 もう一点は最後に街の長官に選出されるところで、ここでは主人公と共に旅をする二人の仲間が登場します。この二人は、当然あわよくば長官の地位をと考えているのですが、主人公が選ばれると、まるで自分たちのことのように喜んだという記述があり、なかなかいい奴らだったようです。いずれにしろ、原版はRinglet版とは違う面白さがあります。

 Fairytaleでは一般的なRule of Threeが、この話ではただ繰り返すだけでなくちゃんと物語の伏線として機能しているところは特筆すべきでしょう。父に怒られるシーンでの鳥、犬、蛙との遭遇が、追放後の犬、蛙、鳥のストーリーと綺麗にリンクしている点は秀逸です。また、動物や植物、果ては家具や家などがしゃべるのはFairytaleでは当たり前に思われますが、この話では動物と会話が出来る能力は明らかに異端であり、好ましく思われていません。現実的な大人と夢見がちな子供の対比と見ることも出来るでしょうし、あるいは動物と会話が出来たらいいのにという普遍的な願望が現れたストーリーともとれるでしょう。

 動物の言葉が解るジルダ。わりと裕福な家の娘なので、服装もそれなりです。ややくせ毛という設定でした。(TINA)

 お金持ちさんなのでレースがところどころついてます。この帽子が結構好きです。挿絵ではちょっと見づらいので残念。動物とお話できるっていうのはあこがれます。(かずしま)