| 魔法の下着 | 採集地:--- |
| 「ゲスタ・ローマノールム "貞潔について"」より | |
|
リア充大爆発しろシリーズ。 出典であるゲスタ・ロマノールム(Gesta Romanorum、ローマ人の物語)は中世後期に成立したヨーロッパ最古に分類される物語集で、正確な成立年代及び作者は解っていません。現存する最も古い写本は1342年のもの(つまり、話としてはさらに古くから知られていたはずです)で、ドイツでの発見例が多いことからそのあたりで編纂され、各地に広まったと推定されています。 ゲスタ・ロマノールムは全体的に教訓話であり、語り口は無味乾燥で物語性は極力削ぎ落とされています。登場人物は誰も最低限のアクションしか起こしませんし、無駄な会話もまったくないため、Ringlet版では主要キャラクターである夫婦に名前を付け、物語にもかなり手を入れました。 原版ではシャツは妻の母が婿に送った一着だけで「夫婦のどちらかが不貞を働いた場合」効力が失われるとされていますが、このパターンでは、もし夫が不義をした場合、妻はシャツを見るまでは解らないので、下着を二着にした上で「相手が不貞を働いた場合」に変更しています。 この本に収録されている物語には実在の人物(ローマ皇帝など)が登場しますが、歴史的事実ではなく、単にその人物の名前を借りてきているに過ぎません。そのため、キャラクターデザインは中世ドイツに設定してあります。タイトルの「下着」、訳語では「シャツ」となっていますが、大工の親方はこのシャツ一枚で仕事をしています(皇帝がいつも白いのを見ているため)から、現代で言えばTシャツのような感覚でしょう。 中世ではごく一部の身分が高い人々を除けば現代的な意味での下着、パンツやブラジャーに相当するものは着用しておらず、男女ともシュミーズのような長物を肌着としていたようです。夏場の暑い時期などはそれ一着で働いた場合もあったでしょうし、そのままでかけることもあったように思われます。 |
|
![]() |
|
|
現代風に言えばハニートラップ役を演じたエルセです。(この場合は男性からアプローチするわけですが)色仕掛けの話は太古から枚挙にいとまがなく、ほとんど生物学的本能といえるレベルでしょう。中世キリスト教では貞節が重要視されていたようですが、実際の世間が必ずしもそうでなかったことは言うまでもありません。また、アプローチに出かけた騎士たちがことごとく引っかかったわけですから、実際に美しかった上に口も上手かったのでしょう。(TINA) 魔法の肌着、毎日着ても汚れず破けずとても便利そうです。しかし浮気でもしようものならその肌着はすぐに汚れてしまう。快適なようで魔が差す人には不快な肌着ですね。 物語の主人公夫婦はハッピーエンドですがもし現代日本で発売されようものなら浮気を心配する妻達が買い漁り夫に着せ「浮気の心配も無く、加齢臭も無くて非常にいい商品です。☆5を付けないと思います!」とレビューをされるそんな未来を想像しました。 物語で出てくる、魔法の〇〇アイテムは魔人が出てきて助けてくれたり、水が湧き出て来たり、金儲けが出来たりなんかを想像しますが浮気をしたら分かるよ! とはちょっと珍しいタイプな気がします。 それだけこのお話が生まれた時代が妻の不貞を心配する人が多かったのかもしれません。 この物語の主人公の妻、エルケは浮気もせず夫の留守中も家を守っていた一途な妻ですが騎士含め側近の男3人も家に閉じ込めてしまうとは少々恐ろしい気もします。(市九紫) |
|