消えた月 採集地:イギリス(イングランド)
「ヤラリー・ブラウン イギリス民話集2 "埋められた月"」より
 非常に特徴的なストーリー展開で他に類話がみあたらないため、出自の信憑性を疑われた(※1)というFairytaleです。狭い地域で語り継がれてきた話なのでしょう。出典は北リンカンシャー(North Lincolnshire)とあります。航空写真を見ると今では穀倉地帯と言った感じですが、川にも近く、土地も低そうなので、昔は森と湿地帯が続いていたのでしょう。月信仰の話とも書かれていますが、儀式部分にあたる後半の一部がキリスト教的であるため、Ringlet版では改変してあります。オリジナルは下記の通り。

 こうして何日か経ち、新月が出る時が来た。人々はポケットに小銭(Pennies)を入れ、帽子に藁を挿し、月を迎える用意を整えた。

 夜がやってくる前に、石をひとつ口に入れ、はしばみの小枝を持って出かけるんだ。家に戻るまで、誰も一言もしゃべってはいけないよ。沼地のど真ん中まで、恐れずに進んでいくんだ。すると、棺とろうそくと十字架があるはずさ。月の居場所は、そこからそう遠くないはずだ。

 そこでみんなは泥の中にひざまずき、「おお、主よ(Our Lord)」と祈った。十字架が前にあったので、まず前を向いて、次には幽霊(Bogles)を追い払うために後ろを向いて祈った。ただし、声はださなかった。

 空に輝いている間は無敵な月ですが、人の姿をして地上に降りてくるとまるきり弱いようです。また、主人公の名前も個性的なものにしてみました。主人公のハードモッド(Heardmod)は「勇敢な」という意味で、本編では出てこなかった月の地上名はリフトフェアト(Lyftfæt)、そのまま「月」という古語でした。

※1 英語版Wikipedia "The Buried Moon"より。


 月の神ということで、人間離れ&(エルセにしては)ありえないほど大人っぽいプロポーションにしてもらいました。それにしても、いくらなんでも弱すぎるというか無防備すぎると思うのですが、神なだけに浮世離れしていたということなのかもしれません。この話では月は女性ですが、世界を見渡すと男女比は半々と言ったところで、グリーンランドでは月は男性として書かれていたりします。(TINA)