| テリエルの娘婿 | 採集地:アルジェリア(カビル地方) |
| 「世界の民話7・カビール "恩知らずの女"」より | |
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カビール(カビル)はアルジェリアの地方名であり、ベルベル系の一部族の名前でもあります。 アルジェリアはサハラ以北アフリカであり、人々は大半がイスラーム化しているためFairytaleの区分上では中近東方面に入れるべきですが、ストーリーにイスラーム要素が見当たらないため、アフリカに組み込みました。 このストーリーにはカビルのエッセンスが凝縮されていて、民話に登場するキャラクターが総出演しています。 以下に本の解説を引用の上、加筆して載せておきます。 ウーアルセン・・・またはワルセニウ。複数形はイワルセニウン。人を食う大男。 テリエル・・・人間と同じ姿をした人食い魔女。だいたいは老婆で、敵の場合も味方の場合もある。他のストーリーでは少女がテリエルに「なった」という話もあるので、特別な力を持つ人間かもしれない。 アゲッリド・・・たいていは「王」と訳されるが、「族長」ぐらいのイメージが正しいと思われる。幾つかの部族の長、あるいは村のお偉方。 ストーリーの方でもいくつか印象的なシーンがあります。 魔女テリエルの義理の息子となるシーンは、原版では「このテリエルの乳房は長く垂れ下がっていた。そこで、仕事の邪魔にならないように、乳房を肩越しに背中へ放り投げて、背中にぶら下げていた」とあります。カビールには「(理由はどうあれ)自分の乳を飲んだ人間は自分の子供も同然」というルールがあり、魔女に上手く対抗する合理的な判断だったことが伺えます。イスラームでは乳兄弟(同じ乳母で育った人間)は結婚できない規定がありますが、こうした習慣は世界に広く認められる部類のものでもあります。 また、Ringlet版ではカットしましたが、後半で主人公を陥れる男は「ユダヤ人」と記されていて、カビールでもユダヤ人=悪者という構図が見て取れます。 編者はこのストーリーを「変化に乏しい」と評していますが、やや長いものの十分起伏に富んだ面白い話だと思います。 |
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| テリエル母娘。死んだ主人公をあっさりと生き返らせてくれたり、地味に最強アイテムである「なんでも願いが叶う指輪」をくれたりと、エルセの言う通りメインを張るのは母親の方だったりします。後半を〆るのは娘の方で、鋭い観察力と夫と打ち合える武力を持っているのはさすが魔女の娘だと言えるでしょう。(TINA) | |